S.s. liaodengensis について

Sus scrofa の新しい亜種である。S.s. domesticus にきわめて近いが、頭が黒い。亜種名は発見地・遼東地方に因んで付けたところである。

なお、この地方のS. scrofa について、5世紀に書かれた『後漢書』中の「朱馮虞鄭周列傳」は、朱浮の彭寵宛私信に次の記述があることを紹介している。
往時遼東有豕、生子白頭、異而獻之、行至河東、見群豕皆白、懷慚而還。
むかし、豚を飼っている遼東の人がいた。その豚が子どもを産んだが、頭が白い。これは珍しいものだ、朝廷に献上しようということになった。都・洛陽への途上、河東まで来たところ、そこらに群れている豚は、どれも頭が白いではないか。飼い主は恥ずかしくなって、引き返してきた。

私は、いまからこの新亜種発見について、都に報告をしに行くところである。もちろん、遼河を渡るのは初めてのことであり、とてもわくわくしている。